県は市よりもエラくはない。入札参加資格を取るときに下調べが必要な理由

「都道府県と市町村って、結局一緒でしょ?」「市区町村って、都道府県の出先機関みたいなもんでしょ?」と、実際に言われたことがあります。

皆さんの認識はどうですか?

「都道府県は市区町村よりエラい」はもう古い!

いま事業者として活躍されている世代の方のなかには、学校で「都道府県は市区町村の上に立つ、都道府県のほうがエラい」ように聞こえる教わり方をした方も多いと思います。もっと言えば、国>都道府県>市町村の順で、ほとんど出先機関のように聞いた方もいるかもしれません。

え~っとほら、なんか…「機関委任事務」とか…?
(※厳密な用語ではいろいろ違いますが、ニュアンスで)

でもそれ、今はもう時代遅れなんです…!!

地方自治は少しずつ拡大してきた歴史があります。かつてのことはともかくとして、現在は「地域に重なりがあるだけの、ほぼ完全に別のお役所」です。

エリアが重なる以上、相互に連携したり、特定の制度の管理監督の役割を担っていたり…ということはありますが、市区町村に提出したものが何でも自動的に都道府県に届いたり、都道府県が市区町村の一挙手一投足を規制していたりするものではありません。

なお、ここでは市区町村と言っていますが、ここで言うお役所として独立している区は「東京23区」のことです。横浜市や大阪市の区はいわゆる行政区というもので、市の管轄課(まさしく上下関係、出先機関の関係)にあります。

国、都道府県と市区町村の扱う仕事の違い

ざっくり言えば、市区町村は都道府県よりも「市民にとって身近なものごと」を扱っていることが多いです。たとえば戸籍や住民票のこと、国民健康保険のこと、近所の公園のこと、保育園のことなど…。

これに対して都道府県は、より大きく抽象的なものごとを扱います。大規模な土地開発、大きめのスポーツ大会、啓発活動や情報のとりまとめなども、都道府県の仕事に含まれます。

もっと大きな国規模では、広域の制度の実施、制度運用の統一、巨大なものの管理、大きな予算を動かす支援策などを実施しています。

同じものであっても、大きさや性質によって、管理する機関が違うこともあります。
あくまでも傾向として、国道>県道>市道であることは、なんとなく皆さんもイメージができるでしょう。だから妙に小規模で重要度の低そうな国道を見つけたら「国道なのに…」と言ったりしますね。
国道は国の道路ですから、基本的には国が管理しています。県道は県、市道は市です。

このように、国、都道府県、市町村は、それぞれ扱っている内容が分かれています。その分かれ方はしばしば一般人にとって分かりにくいのですが、一応は規則を持って、重要度が高いものや大きなものは国に、中くらいなら都道府県に、身近で小さなものは市区町村にと分けられているのです。
(ただし、大規模な市では一部、県レベルに扱われていることもあります。それはまた別の話)

入札参加資格を取る前に知っておきたい、お役所の管理区分のこと

入札参加資格は、1つではありません。国の1つ1つの機関、それぞれの都道府県、市区町村…まとめて取れる場合もあるとはいえ、ものすごい数の資格が存在します。

その中からどれを選んで取得するか?

国を選べば全国どの役所の案件でもできるでしょ、というわけではないのは、これまでの説明で分かると思います。国と都道府県と市区町村はそれぞれ別の主体です。そこをチャンポンにしてしまっては、地方自治がすたれてしまいます。

だから、どれを選ぶかが大事なのです。あなたの業種、立地、規模に比して、どこの資格を組み合わせて取れば最も多く仕事が得られる可能性があるのかを、見極めなければなりません。

あれはどこの管轄だ?問題

ところで皆さん。あなたの家からいちばん近い川は、誰が整備の責任を負っていますか?

かつて、ある川の整備について、住民への説明会がありました。
整備工事を担当するのは東京都の機関です。

質疑応答の時間に、ある人が尋ねました。
「川に親しめるような、河川敷に降りられる設備があったら嬉しいのだけれど、そういう計画はありますか?」

担当者はこう回答を始めました。
「それは区の管轄になるので、明確にお応えすることはできないのですが…」

この川の流路を整備し、洪水対策をしているのは、都です。
ところが、日常の草刈りや水辺の空間の管理は、区です。
「その川は誰が管理していますか?」の答えは、1つではない可能性があります。

入札案件を探すとき、見なければいけないのは「どこがその仕事を出しているか?」です。原則で言えば、その川は都の管轄になります。でも、その川の草刈りの案件を出しているのは区なのです。

また同じ草刈りでも、都立施設の草刈りなら東京都から出ていることもあります。国の庁舎の周りにだって植栽があれば草は生えます。草刈りだから市区町村、とばかりも言えないのが、難しいところです。

入札を検索するときのポイントは「管轄」と「立地」、そして「言葉」

入札案件を調べる方法は、過去の記事でも扱いました。
無料の「調達ポータル」や「官公需情報ポータルサイト」、発注元の機関のサイトなどでも、案件を調べることができます。

検索をして取得する資格を選ぶときに大切なポイントは3つです。

①管轄

ここまでに書いてきたとおり、どこがその発注を出しているのか、求める部分を管轄しているのは誰なのか?です。

②立地

「行ける範囲にどんな公共施設があるか?」です。分かりやすいのは「市役所の隣に住んでいます」「社屋の目の前に保健所があります」などですが、業種によっては公園や目立たないセンター、川や道路、自衛隊基地・駐屯地など、普段あまり意識しないような施設から案件が発生していることもあります。

また、移動に自動車を使えるか、駅から近いかというような物理的な条件や、仕事のためにどの程度の時間なら移動しても良いかといった感覚的な条件、移動先での活動内容がどの程度想定されるか(たとえば受取・納品だけ出向くことができれば可能な業種もあれば、現地ですべてできなければ成立しない業種もある)なども、取得する資格の選択に影響します。

③言葉

お役所言葉は時に独特です。
ここまで草刈りという言葉を使ってきましたが、「草刈り」でヒットする案件よりも「除草」や送り仮名のない「草刈」のほうが多いでしょう。1つのキーワードで検索してうまく引っかからなかったとしても、言い換えることで見つかる場合があります。

時には専門家や有料ツールを頼ろう

河川敷の整備の一部が区の管轄になっているのは、それなりの規定によるものです。お役所の管轄が何の規定もなく自由気ままに決まることはありません。しかし一方でその規定の組み合わせは複雑で、1つの法律だけに目を通せばすべてが分かるものでもなく、必ずしも一見して誰もが理解できるようなものではありません。

だからこそ、入札参加資格の取得を考えるときには、下調べが大事になります。

まず大前提として、国>都道府県>市区町村の図式は捨て去りましょう。それぞれ別のものとしての認識になりましょう。その上で、

自分の業種の案件はどこから出るか?どのくらいの規模か?
自分の事業所の近くにある施設はどこのもので、そこにはどんな仕事があるか?

アタリはつけましょう。ただしそれを信じ込まないで、いったん確認しましょう。

過去にどんな案件があったかは無料のサイトでの検索には限界があり、有料の入札情報サイトを使う、専門家に聞くなどの方法が効果的です。本気で知りたいなら、そちらも検討してみましょう。

今回の学び

都道府県と市区町村はもはや上下関係とは言えない、別の主体。
どこが何を管理しているのかは、入札参加資格を取得する前に細かく確認しておこう。