公共案件に参画するには、入札参加資格を取る必要があります。
今回の記事では、複数の資格を一気に取ることができる「お得」なしくみについてまとめます。
※入札の基本的なしくみについては、基礎知識シリーズもご覧ください。
前提:入札参加資格の数の話
前段階として、「複数の資格が一度に取れる」とはどういう意味で、どういうメリットがあるのか、いったんおさらいしておきます。
基礎知識シリーズを読み終えている人や、入札参加資格についてある程度の知識がある方は、飛ばしていただいてかまいません。
入札参加資格は星の数ほど存在する
星の数…は言い過ぎかもしれませんが、ものすごい数の入札参加資格が存在するのは確かです。
資格の種類は大きく分けて2つあります。1つは建設(工事)・測量系か、物品・サービスかの業種区分。その下に具体的な業務の区分があります。そしてもう1つが、地域や機関の区分。今回の記事のメインは後者ですが、前者の区分も関係はしてくるので覚えておいてくださいね。
さて、なぜ資格の数が多いのか。それは、機関ごと、自治体ごとに、それぞれ別の資格である、というのが原則だからです。
本来的に言えば、厚労省の資格と国交省の資格はまったく別のものです。
東京都の資格と北海道の資格も別。
横浜市と川崎市の資格も別。
東京都の資格と目黒区の資格も別です。
この記事の執筆現在、政府が出している公式の統計情報「e-Stat」によれば、全国には市町村だけで1,724(東京の特別区を除く)あるそうです。
これに23区と47都道府県が加わり、さらに国の機関も機関の数だけ加わります。1つ1つの手続きをして取得するのは現実的でない数ですね。
まとめて取れる資格がある!
しかし実際には、仮に全国すべての資格を取りたいと考えたとしても、先ほどの数の全部を1つずつ潰していかなければならないわけではありません。
距離的に近い自治体同士が処理システムを共有したり、国が簡略化を図ったりしたことで、複数の資格がまとめて取れる場合があるのです!
このようなしくみが使える場合、以下のようなメリットがあります。
- 提出書類が少なく済む
- 規格や期限が統一される
- ラクに多くの資格が取れる=活動の幅を増やせる
できるだけ多くの資格をまとめて取れるほうが、お得ですよね。ここから先は、「じゃあどこの資格をまとめて取得できるの?」にお答えします。
具体的にどこの資格をまとめて取れるのか
本題です。「まとめて取れる場合があるんですよ」と言われても、「で、それはどこ?」「自分の地域はどうなの?」ですよね。具体的にどこの資格が「まとめ取り」できるのか、少し見てみましょう。
なお、情報は執筆時点のものです。実際に申請をする前に、最新情報を確認するようにしてください。
物品・サービス業のみの「全省庁統一資格」
国の主要な入札参加資格を「まとめ取り」できるお得なしくみ、それが「全省庁統一資格」です。
この資格は残念ながら、建設業及び測量等で入札参加資格を取りたい方には存在しません。物品の製造販売やサービス業で参入したいときにだけ利用できます。国に関連する資格の全部ではないものの主な省庁は含まれているため、国まわりのエントリー資格としてもおすすめです。
逆に国に関連するが統一資格に含まれていない機関はどういうものがあるかというと、たとえばNHK、赤十字、URなど、特殊法人と言われるようなものが中心です。
自衛隊の駐屯地や関連施設は防衛省の機関なので、全省庁統一資格でOKです!
もし事業所の近くに国の機関やその出先があり、そこからの案件が見込まれそうなときは、その機関が全省庁統一資格に含まれているかどうかを確認してみましょう。一覧はこちらですが、一覧を見ても具体的にわからないときは、行政書士に相談してみましょう。
なおJRAは2025年度まで独自の資格でしたが、2026年度から全省庁統一資格でも良いこととなり、年度いっぱいで独自資格は廃止される予定です。今後も特殊法人など独自資格の団体が、統一資格に移行していく可能性は十分にあります。
自治体のまとめ取り
地方自治体では、近隣自治体の「まとめ取り」システムが増えてきています。
以下では、執筆時点で入札参加資格の「まとめ取り」に一部でも対応していることが確認できた20の都道府県を地方別に紹介します。
北海道~東北
▷北海道
かなり多くの市町村の資格の審査が一本化されています。ただし、道の資格が含まれるのは工事だけで、物品・サービス分野では道の資格を別に取る必要があります。また、肝心の札幌市をはじめ不参加の自治体や、工事のみ参加の自治体も多い点で、絶妙な不便さ、複雑さは残っています。
東北では導入が確認できた県が残念ながらゼロでした。
関東
▷茨城県
建設系のみ共同受付があり、ほとんどの市町村が参加しているようです。
▷群馬県
建設系も物品・サービス系も、30以上の市町村・団体が共同システムで受け付けています。
▷東京都
東京都の資格は都内の市区町村とは別のシステムになっています。しかし、23区と島しょ部を除く市町村、3つの衛生系組合は、まとめて1つのシステムで取得可能です。
▷神奈川県
神奈川県では、県、29の市町村、広域水道企業団のあわせて31の資格を1つのシステムで同時に申請できます。
ただし、県内の主要自治体である横浜市と川崎市はこの中に含まれていないため、それぞれ別に取得する必要があります。
▷埼玉県
県と多くの市町村・一部事務組合の資格を共同システムでまとめて申請できます。ただし、建設系(工事)と物品・サービスで対象自治体の範囲が違うことに注意が必要です。工事の方が共同化は早く進んでいます。
執筆時点では工事・物品等ともに未参加なのは越生町のみとなっており、主要な自治体をカバーしている点では利便性が高いと言えそうです。
中部地方
▷長野県
県と34市町村で、建設・測量等、物品・サービスの両方について共同で受け付けています。
▷愛知県
工事系では県と名古屋市以外の市町村、物品系では県と名古屋市以外の市町村に加え10の組合が、共同で申請を受け付けています。
▷山梨県
県は県だけの独自で、26市町村と14一部事務組合の全分野の共同申請があります。
▷岐阜県
建設・測量等のみ、県と全市町村の統一システムが稼働しています。
近畿地方
▷三重県
「三重県市町総合事務組合」から、三重県・尾鷲市・熊野市・紀宝町を除く全市町と四日市港管理組合の資格、あわせて27の物品等の資格をまとめて取得できます。
また、建設・測量等については県、熊野市を除く市町、四日市港管理組合の資格を三重県建設技術センターが共同受付しています。
▷滋賀県
建設・測量等のみ、県、市町等の共同申請システムが稼働しています。
中国地方
▷島根県
県、すべての市、ほとんどの町が参加する共同システムがあり、資格申請が一元化されています。
▷広島県
県と「広島市以外の市町」は共同システムで申請できるようです(ウソみたいにわかりにくい迷路仕様ですが、たぶんそういうこと)。
▷鳥取県
建設・測量等のみ、県と主要市を含む一部の自治体で共同システムを利用できます。
四国
▷高知県
建設・測量等のみ、県及び県内全市町村が共同システムで申請可能です。
▷愛媛県
建設等は県と全市町村が共同システム対応済み。物品・サービスは愛媛県、松前町、砥部町の3つのみ対象。
▷香川県
建設・測量等は県、13市町村と2団体、物品等は県、2市、1団体が共同システム対象です。
▷徳島県
建設・測量系のみ、県と県内のほとんどの市町村が参加する共同システムあり。物品等は別個です。
九州
▷大分県
県と一部市町村の資格申請について、2024年度から共同システムの利用が開始されました。大分県の18の市町村のうち、工事で15、物品等では14が参加しており、かなり普及していると考えて良さそうです。
どうすれば身近な自治体について確認できる?
今回、執筆者は少なくとも47回検索したわけですが(確認のため実際にはもっと多く検索しています)、それでも見逃しの可能性は否定できませんし、今後増える可能性もあります。では、自分が取得を考えている自治体や機関が「ほかの機関と一緒に資格取得できるのかどうか」を知るには、どうしたら良いでしょうか?
取りたいところが決まっているのなら簡単です。「自治体または機関名 入札参加資格」で検索すると、取得方法が出てきます。共同システムを使っていれば、取得方法の説明や操作マニュアルなどに、その旨が書かれています。また実際に申請する際には、申請する機関を選択するメニューが出てくるなど、見逃さないような設計になっているはずです。
実は外側からぼんやりと調べるよりも、このようにピンポイントで「この自治体・機関がほしい!」と「申請するつもりで」調べるほうが、正確かつ詳細な情報が出てきます。今回の記事制作で「見落としがあるかも」と記載したのは、市町村1つ1つまで調べるわけにいかなかった、実際に申請をする作業まではしていないといったところにあります。狙いがあるなら、ぜひピンポイントで検索してください。
より漠然と、「この辺でまとめて取れるところ」のようにエリアで調べたいときは、「〇〇県 入札参加資格 共同システム」のような検索ワードで調べると、共同のシステムがあるかどうか確認できます。
ただし、「入札手続き」は共同化されているが「資格申請」は共同ではないなど、一見してわかりにくい場合もあります。調べてみてもよく分からない場合は、行政書士に相談してみましょう。
今回の学び
資格の「まとめ取り」ができれば、少ない手間で多くの資格を取得できる。近くの機関が含まれているかどうか、確認してみよう。行き詰まったら行政書士へ。
