非営利で活動をしてきて、いよいよ法人化。NPO法人を目指してみようかな…と思ったとき、ネックになるのが「人数」です。
この記事ではNPO法人に関する「10人」「4人」の2つの人数と、それがなぜ壁になってしまうのかを紐解きます。「NPO法人」の語が頭をよぎってはいるけれどまだ具体化していない、という段階で、先に知っておいてほしいと思います。
「10人・4人」の壁とは?
NPO法人には最低でも10人の仲間が必要です。
また、その10人以上の仲間のうち、役員になる人が最低でも4人(理事3人・監事1人)必要です。
必要な10人とは「NPO法上の社員」、株式会社でいえば株主に近い人たちです。会費を払い、団体の意思決定にあたっての投票権を持ちます。ただし、配当のような利益を得ることはありません。
役員の4人のうち、理事は日常的な運営を主に担う人たち、監事はその理事の運営を監督する人です(なお、社員と役員は兼任できます)。
社員と役員の名簿は都道府県等に定期的に提出されます。社員名簿はネット上では公開されませんが、役員名簿は設立申請時にネット上で氏名部分が公開されます。さらに代表権を持つ役員(理事長等)については、氏名や住所が登記簿に表示されます。
壁が壁である理由
なぜ10人・4人という人数が壁になるのか。
主なパターンは2つあります。最初から10人の仲間がいない場合と、仲間はいるのに社員・役員にはなってもらえない場合です。
仲間がいなくても回るなら、壁を超える必要はないかも
まずそもそも「法人化を考える段階にありながら、10人も仲間を集めることが難しい場合」があります。
このような場合は、これから仲間を増やしてNPOを目指すのか、あるいは少人数で回していくことを前提に他の法人格を選ぶのか、長期的な計画を立てて検討したほうが良いでしょう。
これは必ずしも後ろ向きなことではありません。これからどんな活動を、どんな人としていきたいのか、そのためには何が必要かを洗い出してみると、実は目標自体がNPOに適していなかった、他のスキームのほうが良かったという場合もあります。
現に10人いなくても活動が十分に回っているのであれば、無理にNPOを目指さないほうが良い可能性もそれなりに高いと言え、検討の余地は十分にあるでしょう。
仲間がいるのに引き受けてもらえない「ありがちな理由」はこれ!
他方、「10人以上の仲間はいるのだけれど、いざ法人化となると協力してもらえない」パターンが意外と多く、これが大きな壁になってしまうことがあります。
名簿の公表などは、確かに嫌がる人もいるポイントです。しかし実は、NPO設立で10人以上いるのに協力してもらえない事例では、「それ以外」の理由が大半になります。
ありがち理由① 家族の理解が得られない
ボランティアとして非営利活動に関わる人には、「専業主婦」や「子育てママ」などの立場の方が多くいます。あえてこの書き方をしたのには意味があり、「家族の理解が得られない」を理由に協力を断る人のほとんどが、「自らの収入が少ない社会的女性」です。そして家族とはほとんどの場合に夫です。
いまだに、「空き時間にちょっとボランティアをするくらいなら許されるけれど、本格的に団体や法人に関わるのは許される範囲を超えてしまう」という感覚の女性はかなり多くいます。現実に家族に反対される場合もあれば、「自粛」してしまう人もいるようです。
また、法人化で社員となると通常は会費を徴収することになるため、額がかなり小さくても、「お金がかかることは自分の判断ではできない」と断る人もいます。
ありがち理由② 日本文化に基づく遠慮
社員、役員といった言葉が紐づくことで、「地位」や「責任」の語が脳内をチラつき、遠慮して断ってしまう人がいます。
「私にはそんな大役は務まらない」「もっと良い人がいるはず」「目立ちたくない」「私なんかがそんなところに名を連ねるのは…」。なんとも日本らしい、おくゆかしい感覚です。
どうすれば壁を超えられるか?
ではどうすれば「仲間がいない」や「ありがち理由」を超えて、法人設立に必要な人数を確保できるでしょうか?
対策① 制度や役割をしっかり説明する
「社員・会員」や「役員」の言葉で片付けず、打診している役割がどのようなものなのかをしっかり説明し、誤解を解くことが、「ありがち理由」で断る人の決断をくつがえす助けになります。
というのも、断る人の多くが「目立つ」「責任が重い」「負担が大きい」などのイメージを抱いているためです。具体的な役割や、「今のその人の活動状況とそれほど違いがないこと」を理解できれば、それならと引き受けてくれることがあります。
そのためには、設立を考えている代表者が、NPOの制度を理解し、説明できなければなりません。知識を得るため士業や役所の窓口に相談・質問をしたりして、代表自らが学ぶ姿勢を持つことが大切です。
このことは、設立後にも役に立ちます。設立の手続きは士業に丸投げできても、設立後の法律に従った運営はある程度自分たちで行うのです。会員って何をする人?役員は何をする人?というところがわからないままでは、いずれにしてもどこかで行き詰まります。この機会にしっかり整理し、仲間集めの助けにしていきましょう。
対策② 10人と言わず、たくさんの仲間を集める
NPO法人の10人はあくまでも「最低人数」です。NPO法上の社員が10人を超えて多くなっても良く(増やしすぎると意思決定が難しくなる弊害はありますが)、まして社員以外の「賛助会員」や「ボランティアさん」「寄付者」はもっともっとたくさんいて良いのです。
法人化を急ぎたい気持ちはわかります。しかし、社員や役員にまでなりたがらない人が多いのは、まだまだ「万難を排して本気で一緒に頑張ってくれる仲間」が足りていないという見方もできるかもしれません。
もっとたくさんの仲間を集めてみましょう。10人と言わず、20人、30人と集めましょう。100人いれば、10人くらいはお金を出して参画してくれるのではないでしょうか。100人のうち4人くらいは、役員として運営に関わっても良いと考えてくれるのではないでしょうか。
対策➂ 背後の家族まで説得するビジョンの共有
どの団体さんも、活動の背景には深い問題意識や、目指す姿があることでしょう。しかし、それが活動の関係者全員に伝わっているかどうかは、考えてみる余地があるかもしれません。
活動を続けるうちに目の前の課題への対処に目が向いてしまい、団体が最終的にどこを目指しているのかの長期的なビジョンがブレてしまっていることもあります。
一度、ビジョンを見直してみましょう。活動の最終目的、目指す社会像、そのためには何が必要で、今の活動がどうつながっていくのか、目的に向かう上での課題は何か、説明できるようにしましょう。できれば資料も作りましょう。事業計画を立てることに慣れた専門家の力を借りるのもおすすめです。
そうすれば、法人化がなぜ必要なのか、なぜ目の前のその人に社員・役員を頼みたいかも、明確になるはずです。
家族が理解してくれないのであれば、その家族も説得しましょう。説得できるだけのビジョンと根拠が自然と伝わるような活動をし、必要であれば資料も提供できると言えるようにしましょう。もちろん、活動のすばらしさだけでなく、負担の面、特に家庭に与える影響度合いについての説明も、随時伝えられると良いでしょう。
対策④ 多様な人を取り込む工夫
「ありがち理由」で断る人の多くは「家庭を持つ、自らの収入が少ない女性」です。
であれば、それ以外の属性の人もバランス良く集めることができれば、引き受けてくれる人も増えるだろうと予測できます。実際、すでに営利事業をしている事業者が別建てでNPOを立てる場合などは、比較的スムーズに10人・4人を集めることができる傾向にあるようです。
関わる人の属性がどうしても偏るのには、「口コミで拡大してきたから」「特定の環境の人が問題意識を持ちやすい社会課題」などの避けがたい理由もあります。しかしそれだけではなく偏りやすい理由でもあり、気を付けなければいけない点でもあるのは「属性によって訴求の仕方が違う」ところと、「関わり方が特定の属性向けに限定されてしまっている」パターンがあるところです。
今、あなたの活動に関わるには、どのような方法がありますか?
平日の昼間しか活動がないと、会社員が関わりにくくなります。これはお金を稼ぎ管理する立場の人が入りにくくなることを示しています。逆に夜の活動ばかりだと、子育て世代が関わりにくくなるかもしれません。
運営上の限界はあると思いますが、まずは関わる方法、出会う方法を増やしていくことが、多様な人の関わりにつながります。メインの活動が夜でも、経理や事務は昼に頼めるかもしれません。平日昼間の活動に参加できない人も、夜に広報などで関わったり、土日にイベントを担ったりできるかもしれません。家族が理解しないというなら、家族も関わってもらえるようにするのも1つの手です。
ただその際、難しいのが、「刺さるポイントが違う」ところです。
「地域に貢献できる」が良い人もいれば、「能力を活かせる」「人脈につながる」「自己実現」のような言葉に惹かれる人もいます。「負担が小さい」「時間が短い」のような消極的な点や「人間関係」のような活動本体とは違う部分が参画の決め手になる人もいます。
1つの側面だけで訴えていれば、それに共鳴する似たような人ばかり集まってしまうのは当然です。いろいろな側面からの説明で、いろいろな人を取り込むように、工夫してみましょう。時には普段つながりのないタイプの人にも話をしてみましょう。10人と言わず100人集めるために、「手伝ってくれる人を探しています」と大声で言ってみましょう。
困ったときは、誰に相談すれば良い?
残念ながら10人集まらないと法人を設立するところには進めません。これは法律上の問題なので、相談されてもどうしようもないところです。
しかし、その10人・4人の壁を超えるために専門家を頼ることはできます。
▷NPOの制度について知る
・行政書士、役所の担当課、弁護士等
▷長期的な活動の計画を立てる
・事業全体の計画:行政書士、中小企業診断士
・お会計に特化した計画:税理士、非営利向けファンドレイザー
・法的な問題の整理:弁護士、行政書士など
▷広報、資料
・専門的な説明資料の作成:行政書士や弁護士など
・見栄えの良い資料の作成:デザイナー、広告会社など
・より幅広い訴求:マーケティング会社など
非営利団体であれば安く、またはプロボノとして関わってくれる専門家も、ときには見つかります。
そもそもNPOが10人という要件を用意しているのは、多様な人の力でより透明かつ公益性の高い運営ができると考えられているからです。いろいろな人に頼ることも、NPOを目指す非営利活動の大切な側面の1つ。行き詰まりそうなときは、早めに相談してみましょう。
今回の学び
- 社員10人・役員4人がNPO設立の最低条件
- 仲間がいないのなら、本当にNPOで良いのか、長期的な視点で検討してみて
- 仲間がいても壁が超えられないときは、多様な人を10人を超えて取り入れる視点を持ってみよう
