なんでその修正が必要なの?お役所の2大行動原理

役所からの修正依頼、民間の人からすると「なんでそこを直す必要が?」と思うようなことも多いです。しかし残念ながらそこは役所の論理で動いているところなので、怒ってみても引っ込められはしなかったりもします。

できればそんな修正依頼は依頼さえ来させずになんとかしたいところ。
もし来てしまったとしても、「あ~ハイハイ、いつものアレね」と軽く流してしまいたいところです。

そんなわけで、今回は「役所はなぜその修正を依頼するのか?」の観点から、2つの「役所の行動原理」を取り上げたいと思います。

お役所は性悪説で動いている

1文字、1単語のことなら、そっちで直してくれればいいじゃないか!!と思ったことがある方、いらっしゃることと思います。どう書けばいいのか教えてくれるんだったら、そっちで埋めてくれればいいじゃないか!とも…。

しかし役所としては、そういうわけにはいかない事情があります。役所のタテマエは「本人がそのように申請してきた」ということにあるからです。

もし役所の人が書いてしまうと、「役所がそのように言わせた」「役所が“改ざん”した」ということになりかねません。それでは困ります。あくまでも申請者がそういうふうに申請したというテイでなければ困るのです。

コッソリならいいじゃない…と言われて従ってしまい、後になって「いや、そんなことは言っていない、役所が勝手にやったんだ!」「これは自分の真意じゃない!」なんて言われてしまっては、役所のほうではどうしようもなくなってしまいます。たとえそれが事業者のために良いことであったとしても、事業者側がそれをどういう風に「悪用」するか、わかったものではない―それが役所の基本的な考え方です。

そうです、役所は「性悪説」で動いています。自分たちのすべての言動は曲解され、証拠を取られ、晒され、訴えられ、悪用されるという前提でものを考えています。だからこそ、「いかなる方法でも悪用されないような、逃げ道のない方法」を指示せざるを得ないのです。無駄に思えたとしても。

現実の運用では、それでも軽微なものであれば「直しておきますね」と連絡1本で済むこともないでもないのですが…原則としては「自分でやらせる」ことになるので、たとえ一言一句を指示するのだとしても「自分で書いて自分で出し直せ」ということになってしまいます。

「それ、そっちでやってくれないんですか?」は、役所に言っても詮無いことと呑み込みましょう。あなたが悪用するからではなく、悪用し難癖をつけるような悪い奴がいるからそうなのです。

お役所は整合性にこだわる

役所は日付にこだわります。というのはつまり、時系列にこだわります。

たとえば、申請書のどれか1枚に受付開始日より前の日付が書いてあったら、実際の提出日が受付開始後であっても、ほぼハネられます。民間のやりとりでは「早めに出す」のは歓迎されますが、役所相手だとそうとも限りません。

また、「順序」も重視されます。本来は先に出るものが後になってしまった場合でも、記載する日付については元の順序を求められたりします。
こういう細かいルールに準拠するため、あえて「日付は空欄で」と指定する場合もあります。

同様に、物事の流れの整合性も気にします。「事情が変わった」「うっかり少し間違えた(でも分かるでしょ)」というようなことは、誰にでもあります。民間であればお互い了解さえすればゴメンで済むところですが、役所相手ではそうもいきません。

「理由書」などのよくわからない書面が求められることがあるのは、変更されたことを記録に残したい場合です。
しかし、その変更が最初の内容と整合性がとれないものだったり、最初に出したものが単に間違っていたりしたら…

そこで出てくるのが、役所名物「さかのぼって修正」です。「最初からそうだったことにしてください」という妙な指示が飛び出してきます。

これは、役所はすべての人に金太郎飴のごとく同じでなければいけない(それが役所の考える「平等」や「公正」)という前提があり、型破りを1つでも認めてしまうと不正が横行しかねないからです。

1日のフライングが許されるなら、1週間のフライングだって許されるかもしれません。1人のズレが許されるなら、他の人のズレも許されるかもしれません。前後の順番が入れ替わっても良いとなれば、本来あるべき順序は守られなくなります。その例外がOKなら、あの例外もOKかもしれません。そうやってズルズルとなし崩しにルールが崩壊してしまうと、役所が求める平等公正が成り立たなくなってしまいます。

ただ、役所で働く人たちも、実際の物事が紙に書いたとおりに必ず進むとは思っていません。どうしてもいろいろな事情があり、いろいろなことが起こります。
そこで、「現場はともかくとして、後に残る証拠だけでもルール通りに」ということが起こります。なぜか?役所の人は異動し、文書だけが公式に保管されるからです。

役所の人は2~3年で異動します。一方、ほとんどの文書はファイリングされ、その人の異動や退職とは関係なく、部署の倉庫に規定の年月の間、保管されます。そこに「個別の事情」が入り込む余地はありません。

のちのち検査や問題の発覚などがあったときに、倉庫の中からルールの中で説明のつかないものが出てこられると困るのです。公的に保管される文書は常に整合性が取れ、順序良く、あるべき姿でなければならず、そうでないものが混入されては困る。これがお役所の原理です。

民間側ができる対策はいくつかあります。
・マニュアルにしっかり目を通し、指示されているとおりに記載する
・ダイレクトに「いつにすればいいですか?」「どう書けばいいですか?」と聞いてしまう(通常、文字ではダメです。電話で聞きましょう)
・どうとでもできるよう、日付は空欄にしておく
・マニュアルどおりに進まないときは、自主的に理由を書面にして添付してみる(日付、宛名、差出人、タイトルを付け、A4サイズで出しましょう)

それでもダメだったときは…諦めましょう。役所ってそういうもんだ、と思って粛々と対処するしかありません。

でも、「なぜそこにこだわるのか?」が分かると、少しは怒りも静まりませんか?

今回の学び

お役所は性悪説で動いている。そして、後に残る書類を「ちゃんと」しておきたい。なぜなら、担当者がいなくなっても保管された書類が説明できるものでないと困るから。