許認可申請では、申請先が都道府県・市町村など地方自治体になる場合が多いです。
このとき知っておきたいのが、「地方自治体への申請では、ローカルルールが多い」ということ。
この記事では、ローカルルールがどんなところに出てくるのか、どのような場面でローカルルールが問題になるのかを扱います。
ローカルルールがある場面・ない場面
地方自治体だけで行われる独自の制度は、ある意味、ほぼすべてがローカルルールで回っています。独自の補助金・助成金や、文化団体の登録・管理制度など、国の法令による制限がないわけではないものの、ほとんどの部分を自治体が独自に決めています。
他方、許認可は多くの場合、国が大半の大事なことを決め、自治体はその運用の仕方を決めているにすぎません。建設業、産廃収集運搬業、清掃業登録などはこのタイプです。
このような制度では、「多くの点では共通しているが、細かい部分だけローカルルールになっている」のが特徴です。
共通する事項
許認可において、「どんな場合に許認可をし、どんな場合には拒否するか」は、かなりの程度、どの自治体でも共通になります。
建設業許可の専任技術者を実務経験の資格で配置する場合には「10年」の経験が必要ですが、これが自治体によって5年になったり20年になったりすることはありません。
主な「様式」(申請書の形式)も、あまり地方差がないものの1つです。たいていは国が形式を決めており、独自で変えて構わない場合であっても、多くの自治体がそのまま使っています。
手数料の額も、こと許認可については、通常どこでも同じです。産廃収集運搬業の81,000円の申請手数料が、どこかの自治体でだけ10万円になったりすることはありません。
ただし、各種の申請のために地方の機関が発行する証明書が必要な場合は、その発行手数料が地域によって違う場合があります。
ローカルルールがある部分
では逆に、ローカルルールが出やすい部分はどこでしょうか?
たとえば以下のようなものがあります。
提出方法
電子で提出できるシステムが充実している自治体もあれば、そうでないところもあります。
電子化に伴って一部の手続きで郵送受付を停止した(!)自治体もあるかと思えば、地方では電子も郵送もなく、出かけて行かなければ話にならない手続きもあります。
電子化といっても、経審システム(JCIP)のように統一規格が作られるのは例外的で、ほとんどは当然のように、自治体ごとに見た目も扱い方も、どこまで電子でできるのかも違っているのが普通です。
では紙ならみんな一緒かというと、そうでもありません。重ねる順序や綴じ方に微妙な違いがあります。縁のない方はびっくりするでしょうが、東京都など一部の組織では「紐綴じ」の指定が現役です!しかし隣の県では、紐で綴じると迷惑がられたりします。
支払方法
一般的に、国は収入印紙、市町村は現金か郵便定額小為替(!)、そして都道府県は収入印紙に似た独自の「収入証紙」を使うことが多いです。
収入印紙というのは役所にお金を払う代わりに郵便局などで先払いする方法ですが、この先払いの支払先が国なので、地方への支払いには使えないのですね。
そこで都道府県ごとに収入証紙が発行されることになるわけですが、これがクセモノで、県内でしか売っておらず、販売所も限定的、郵送対応があるかどうかも調べるのが大変だったりします。交通安全協会や役所の申請窓口で扱っている場合もあれば、県庁内の生協というパターンもありました。
なんやかんやで面倒なのもあり、近年ではクレジットカードなどの電子決済が使える自治体が増え、収入証紙は廃止の傾向にあります。
ただその場合にも、支払者の名義に制限がある(申請者名義のカードに限るなど)こともあり、しかもその点について事前に明確なアナウンスがないこともあります。
確認方法
前述のとおり、どのような場合に許認可をしても良いかは、ほぼ国が統一で決めています。
しかし、その条件を満たしていることを「何を使って、どのように確認するか」は、かなりの程度、自治体に任されています。
このため、コピーで良いのか原本なのか、証明書類は何があればいいのか、印鑑は要るのか等、微妙なところで提出内容の違いが生じます。
また、一部の自治体では、自治体の状況に合わせて、追加の条件を付していることがあります。たとえば東京都では、環境配慮のため、産廃収集運搬業で使用する車両の規格について追加の条件があります。
両者の折衷的なものとして、主な部分は全国共通であるものの、その判断基準が自治体によって違い、結果として書類も変わってくる場合があります。
産廃では使用権がハッキリしている車両しか使えない決まり(これ自体は全国共通)ですが、使用者の登録が申請者であればリースなど所有者が違う車両でもOKとする自治体もあれば、追加の独自の書類が必要になる自治体、原則としてリースでは通らないような自治体もあります。
どこまで許すか
事業者にも個別の事情があるので、地域の事情に即して、多少の逸脱は目をつむってもらえることがあります。
たとえば必要とされる書類がない場合に、代わりの書類によっておおむねの事実が確認できれば、認めている自治体があります(今度からちゃんとしてね、と指導はされますが)。
また、期限を過ぎてしまった場合も、期限を過ぎていたことを示す赤いスタンプをドッカンと押す自治体もあれば、普段通りの扱いをしてくれるところもあります。
しかしこれらはあくまでも温情、自治体ルールだけでなくケースバイケースのところもあり、本来はどれも許されないものだというところに注意が必要です。
結果の受け取り方法
許認可の申請結果は、一部の電子手続きを除き、書面で通知されます。
その書面を、どこに送るか。
送ってほしい場所を書いた返信封筒を送るパターンは、事前にどこに届くかが分かりやすいです。中には黙っていても、代理人がいれば代理人に送るという親切な組織もあります。
しかし中には、「結果だけは絶対に、申請者本人の本社(本店)に送ります!!」という自治体があるのも事実です…。
代理人が業務完了を確認したかろうと、担当者が在宅ワークで不在だろうと、彼らは登記上の本社に送りつけてきます。
もちろん先方には先方の理由があります。書類の送付を兼ねて、本当にそこに郵便物が届く事業所があるのか?ウソの申請ではないか?を確認しているようです。
どのようなときにローカルルールが問題になるのか
ローカルルールがあっても、自分で普通に申請する分には、それほど影響はありません。自治体によって審査結果が大きく変わることは(まれにありますが)少ないようになっていますし、申請先が1つであればそれに合わせれば良い話でもあります。
しかし、このローカルルールが問題になる場合が3つあります。それは「複数か所申請のとき」「移転のとき」と「行政書士に依頼するとき」、つまり「ほかの自治体のルールの影響がある場合」です。
複数か所申請のとき
建設業許可は複数を申請することがない許認可ですが、産廃や清掃業などの許認可・登録では、1つの事業者が同時に複数の自治体に申請することがあります。
このようなときにローカルルールによって大きな違いがあると、中途半端な結果になってしまうことがあります。4つの県に申請をした結果、真ん中だけ許可が下りず、周辺の自治体だけが取れてしまう、ということも、本当にあるのです。最も厳しい自治体に合わせるか、空白地帯ができることを甘受するか、選択を迫られます。
また、細かなところで微妙に違うので、ほとんど同じ書類なのにコピーするわけにはいかなかったり、どれか1つの自治体だけで妙に手間取ったりといった、「足並みの揃わなさ」にも悩まされます。
複数の自治体にまとめて申請するのであれば、ローカルルールに合わせるように自分で頑張るよりも、周辺自治体に詳しく、役所との細かな調整もやってくれる行政書士に投げてしまうほうがラクかもしれません。
移転のとき
事業所の移転で都道府県・市町村をまたいでしまったような場合、申請先が変わるとローカルルールも変わります。
今までの自治体ではこれで良いと言われていたのに、追加の書類がないと認めないと言われた。
これまで一度も言われなかった点を指摘された。
何度も何度も出し直しや追加を求められる…。
そんなことが起こります。
何でダメなんだ!!ではなく、ある程度はローカルルールなんだな、と呑み込みましょう。
ただし、どう考えても理不尽だと感じられる場合は、「特定行政書士」(行政書士の中の追加資格取得者)などに相談してみてください。
行政書士に依頼するとき
行政書士は、理論上は全国どこの事業者の申請でも代理することができます。
ところがローカルルールがあるので、全国一律どこでも同じようにすれば良いわけではありません。経験のない自治体では、提出方法から結果の受け取りまで、すべて細かい勝手が違う、ということになります。
許可そのものが変わらないなら良いじゃないか、ではありません。提出方法や受取方法は、手続の円滑な「流れ」づくりに致命的なまでに影響してきます。
やはり近隣自治体の経験が豊富な行政書士が多いでしょうから、許認可に関しては、できればお近くの行政書士を選ぶのが良いでしょう。
もしお付き合いのある行政書士が遠方の場合、多少段取りが悪く見えても「ローカルルールに振り回されているんだな」と生ぬるく見守ってあげてください。
今回の学び
許認可の書類のやりとりや確認方法は、ローカルルールが強め。ローカルルールがある、と知っておくことが、スムーズな対応につながる。
