物品調達やサービス提供のような幅広い内容が、役所から「入札案件」として委託外注されています。
しかしながら、入札案件を民間の案件と同じように考えていると、痛い目を見ることがあります。
今回は入札案件で失敗しないための、入札案件のメリットを確認した上で、5つの特徴と、それを踏まえた活用方法について説明します。
入札案件を活用するメリット
入札案件を活用するメリットは、主に3つです。
① 信用を得られる
設立したばかりであったり、小規模であったりして、業界や金融機関の信用を得にくい…と感じることはありませんか?
入札案件を通して役所とのやり取りを行った実績は、信用を獲得する要素になります。
「入札参加資格を取得し、お役所とのやり取りを乗り越えて、案件を完遂した」ということは、「少なくともアヤシイ・違法な組織ではなく、きちんとした機関との仕事ができるだけの事業体力を持っている」という印象を与えるからです。
また、入札案件は「先方が支払わないことがない案件」なので、金融機関からは、落札案件がある=収入ほぼ確実と見られます。
② 取りっぱぐれない
支払を踏み倒された経験のある方、意外と少なくないのではないかと思います。
役所との仕事であれば、仕事を完遂したのに支払われないことは、まずありません。落札した時点で、将来の収入はほぼ確定です。
➂ 次に進むためのチャンスになる
入札案件には「等級」のしくみがあり、超・大企業と競り合わずに小規模向けの案件を得られる場合もあります。
また、業界内のしがらみにとらわれず平等にチャレンジできるのも、入札案件の長所です。
これまで下請仕事しか得られなかった人の、自分で案件を取る最初の一歩に。
新たな分野での実績作りに。
入札案件で繁閑を均して人員余りをなくし、収益の機会に。
簡単ではありませんが、民間案件だけで頑張るよりは道が広がるかもしれません。
入札案件の5つの特徴とその対策
取引上で注意すべき入札案件のポイントを見ていきましょう。
今回扱うポイントは5つです。
1 求められているのは、専門性か人員
2 支払いまで時間がかかる
3 利益率が低いことが多い
4 役所側にはビジネス感覚がない
5 予定が立てにくい
順番に見ていきます。
1 求められているのは、専門性か人員
先に言っておきます。
残念ながら入札案件で「誰でも1人でもカンタンにできちゃう魔法の案件」は存在しません。
皆さん「役所の人」と言ったらどういう人を想像しますか?事務員を想像する人が多いでしょうか。
しかし、役所にいるのは事務員だけではありません。
だって役所って、建築確認、やるんです。
夜でも戸籍の受付窓口があって、警備員さんがいるんです。
役所の建物を管理する課があって、簡単な整備は自前でやることもあります。
公立保育園の保育士さんは、役所の直接雇用です。
最近では、広報系企業やIT系の出身者を中途採用する役所も増えています。
役所って、意外と多くのことを自前でできるんです。一般の人が思っているよりもだいぶ多様な人が、直接雇用されているんです。
人員削減が進んだ今でも、役所(出先機関も含め)に数千人以上の所属者がいるのは珍しいことではありません。
そんな組織が「わざわざ外注する」って、どういう場合か。
役所が持っていないような専門的な知識技能が必要な場合。特殊な機材が必要な場合。一時的に大量の人を動かす必要がある場合。
突き詰めれば役所が外注するのは「専門性か人員のどちらかが欲しいとき」です。
だから、入札案件が一見して誰でも簡単にできそうに見えるときは、何らかの落とし穴があります。工程のどこかで機材や専門知識が求められているですとか、思っている以上に業務量が多い(人員が欲しい)ですとか…。
これを甘く見てかかると、
✔ 業務量を回しきれず、ほかの業務へ波及→顧客の信頼を失うなど本末転倒に
✔ 急な雇用や残業代で思いがけず経費増に
✔ 先方が求める要件を満たせず辞退→信用にも傷がつき売上にもならず
✔ 別に専門家を依頼して出費増。ひどいときにはそのせいで赤字に
なんて恐ろしい事態に…。
まず大事なのは、「役所は専門性か人員が欲しい」と呪文のように唱えて、過信しないこと。
もう1つは、入札に進む前に、仕様書をよく読み、必要であれば質問をして、どこに専門性か人員かが求められているかを理解した上で行うことです。
2 支払いまで時間がかかる
入札案件はほとんどが後払いです。原則として前払がない上、大きな案件では逆に保証金を求められることもあります。
さらに、相手が役所だということを忘れてはなりません。大きな組織ですし、役所という性質上、支出とは歳出であり、常に厳しく見られています。少しずつ改善されてはいますが、いまだにローテクのやりとりも多いです。つまり、支払うぞとなってからも時間がかかる。
担当者が「支払います」と公文書を起案し、上に決裁が回って、金融機関にデータが渡り、数営業日かかって支払われる…そういう世界です。案件が終わってから着金まで1ヶ月くらいかかることもザラにあります。
「先に払ってもらわないと、案件を回す資金がないんだけど?」
→融資などを併用しましょう。落札案件を担保にできる場合もありますが、過信せず事前に金融機関に相談を。
「案件が終わってもなかなか振り込まれない。すぐにでも振り込んでもらわないと倒産しそう」
→これは避けたいところです。あらかじめ「支払いは遅くなる」と肝に銘じて、余裕を持っておきましょう。
3 利益率が低いことが多い
入札のしくみについては別に解説しますが、大原則が「最安値」なので、どうしてもある程度は価格下げ競争になります。
したがって、案件が取れても、利益率は民間案件に比べて高くならないのが常です。
第1には、それでもともかく赤字にはならないように、事前の見積もりをしっかりすること。
第2のポイントは、入札案件だけに頼ろうとするのではなく、入札案件を「うまく使って」、成長の土台や足掛かりにすることです。
4 役所にはビジネス感覚がない
役所の担当者は役所以外の世界を知らないことが多いです。自分で事業をしたことももちろんないため、「無茶ぶり」が発生したり、文化衝突が起こってその調整が必要になったりといったアクシデントが起こります。
「ええっ、このお値段で、そこまで要求するんですか?それは無理でしょ…」
「前の業者のやり方を踏襲するように強制される。何のために自分たちに委託しているの?」
「意味の分からない細かな規則を後出しされた」
こういう事態は、避けようがありません。「まったく文化が違う人たち」なので、説明なしには分かり合えるはずがないのです。
ですから見積もりの段階で、そういうやりとりが発生することも見込んだ上で計算しておくことです。キツキツではなく、調整・交渉が発生してもその分の人件費や追加費用を出せる程度の余裕を持っておきましょう。
そうしないと、予想外の実費や人件費に振り回されることになってしまいます。
5 予定が立てにくい
民間案件であれば、「この件、なんとなくいい方向に決まりそうだぞ」「本契約はまだだけれど、もう動き出しても大丈夫そうだ」というような見通しが立つことが多いでしょう。
入札案件には、そういう見通しがありません。
全員の見積もりを開けてみるまで、通るか通らないかはまったく想像できない状態。そして落札となったらすぐに契約、始動となることが多いです。
落札できないことを見込んで複数の案件に入札し、うっかり全部落としてしまったら大変です。
反対に、落札できることを見込んで民間の案件を捨ててしまっては、もし落とせなかったときには売り上げが立たず困ることになります。
ここでも、入札だけに頼ることはおすすめできません。入札案件にはメリットも多くありますが、それだけで食べていけるような状態を作るのは至難の業。特に中小規模の事業者は、地道な民間案件の獲得も忘れないようにするべきです。
入札案件を賢く活用するポイント
入札案件の特徴を理解し、上手に活用して、次のステップへの「踏み台」にしていきましょう!
◎入札案件だけに頼らない
入札案件だけに頼りすぎてしまうと、落札できなかった、支払いが遅いなどで、経営危機に陥りかねません。何のために入札案件を活用したいのか目的を明確にして、バランスよく取り組むのが良いでしょう。
◎資金に余裕をもって
遅めの後払いでもその間の事業費に困らないように、資金の余裕はしっかり見ておきましょう。自信がない場合は早めに融資申請を行うなど、自転車操業にならない工夫が必要です。
◎見積に気を遣おう
入札時は締切が近く、なかなか時間を割けないことも多いかもしれません。それでも、見積はできるだけ緻密に考え、その上で調整・交渉分も加味したギリギリの安値を設定するのが良いと言えます。くれぐれも「どんぶり勘定」はしませんように。
今回の学び
入札案件を得ることには、メリットもある。
しかし、民間と違う点を理解し、「上手に活用する」ことが大切。
