介護と仕事の両立を支援 合同会社地域福祉マネジメント・下村旭さん

大きく分けて3つの柱で営業しています。1つ目は居宅介護支援、いわゆるケアマネ(ケアマネジャー)事業所で、もっぱら個人の高齢者の方のための支援を行います。手間と時間の観点でメインになっているのがこのケアマネ事業です。

2つ目に企業さん向けで、産業ケアマネとしての、仕事と介護の両立支援があります。介護離職を防止するコンサルティングや、個別面談を通して、従業員の介護疲れを回避し企業のコストパフォーマンスを上げる取組みを実施しています。この事業は今、力を入れているところです。

そして3つ目が、介護・医療・福祉分野に特化した建築設計事務所の経営です。私はもともと建築系で、精神病院などの設計監理を経て株式会社ニチイ学館に入り、介護福祉施設の開発を担当してきました。その経験を活かした事業です。

今で言うヤングケアラーだったんです。それもダブルケアのヤングケアラーでした。中学2年生のときに不動産屋を営んでいた父が倒れ、10歳離れた兄の夫婦が同居になって不動産屋を引き継ぎながら、経済的な安定のために居酒屋も兼業し始めました。私は父の介護をしながら姪っ子2人の面倒も見ていたんです。

父の状況が落ち着いたときに大学に入り、不動産と近隣分野の土木・建築を学びました。父は20歳のときに急変して亡くなりましたが、まだ介護制度がない中で介護をやってきたことが自分のベースになったと思います。

1989年に「高齢者保健福祉推進十カ年戦略(ゴールドプラン)」が制定され、建築業界でもシルバービジネスが注目され始めました。自分もその波に乗らなければと研究会に入って学んでいて、93年頃、介護保険制度へ向かう流れを知ったのです。そこで介護分野の勉強をしたいと強く思い、少しずつ歩みを進め始めました。

さまざまな制約があるなか、建築業界と介護福祉業界を行ったり来たりして、2010年にケアマネ資格を取得、16年に「単独独立系ひとりケアマネ」として独立を果たしました。

国際福祉機器展&フォーラムへ訪れたときの写真

特に経験が多いのは、保育園の立ち上げです。退職・独立した2016年は「保育園落ちた日本死ね」の年で、保育園を増やす動きがありました。おかげで事業の立ち上げ初期に、ケアマネの基盤をつくる余裕も得られました。

2020年代に入って保育園の増設は落ち着いてきて、事業として掲げてはいるものの、今ではほぼ休業状態です。

ただ、設計監理の仕事は、ケアマネジャーの仕事とよく似ていると思います。分業制の建築の中で、設計監理者は図面を引いて、現場の専門職、技術者をまとめる役割です。ケアマネジャーが自分でケアするのではなく関わる人たちをコーディネートするのと、同じなんですね。現場での経験は、ケアマネ事業で大いに活かせています。

地域包括支援センターや病院からの依頼が多いです。ときにはデイサービス事業所や、家族の介護が必要になった従業員を抱える企業さんからの相談もあります。

この最後のパターンは、ケアマネ事業だけでなく、両立支援の事業にもつながってくるところです。従業員の家族を頼まれるということは、その従業員さんにも支援が必要な場合が多いからです。

両立支援にも3つの分野があります。育児、治療、そして介護です。このうち、育児と治療については、比較的、支援体制の整備が進んできています。

これに対し介護の分野は、一部での制度整備はされてきているものの、まだまだと言えます。特に中小零細の企業さんでは、社内に専門の人材を設置することが難しいのが現状です。このため、ケアマネジャーの派遣制度を用意している自治体もあります。

しかし企業さんからすると、単にケアマネを紹介されただけでは足りていません。介護の特徴は、いきなり始まることにあります。事前に計画できない中で、制度の情報をどう活用していいかわからないことがありますし、基本的な情報が与えられただけでは、疾患の特性や遠距離介護などの困りごとに応じた対応ができません。

まず1つは、個別性に応じた情報の提供です。制度を説明し、地域包括支援センターや家族会を紹介し、介護認定の申請方法などをお伝えします。これは初期の段階の支援です。

介護が開始したあとも支援の対象になります。状態の悪化などで負担が大きくなり、介護疲れ・介護離職に結びつくことがあるためです。

その場合、50人以上の会社であれば産業医さん、保健師さんが介入し得るのですが、彼らの役割は保健指導にとどまります。配置転換など会社の体制整備に関わることはあっても、実は従業員のプライベートには踏み込めていません。

自分はこれからどうしていけばいいのか、介護のストレスをどう発散していけばいいのか、そういうところは、企業さんの中では踏み込める人がいないんですね。親の徘徊の悩みなど、会社で言えない人も多い。でも、その部分こそが重要なんです。

そこで、私のような産業ケアマネがご本人とお話をして、その人の悩みの根幹や大切にしたいことを、プライベートに寄り添い、一緒に考えます。守秘義務に配慮しつつも、産業医さん、保健師さん、人事労務担当者など必要な範囲に共有し、時には企業側に柔軟な対応を提案しながら、従業員さんの精神的な支えになっていくことが求められています。

ここ最近は「つちぼとけ」を作っています。焼き物の小さい仏像で、般若心経から一文字を取って後ろ側に書く「一文字写経」をします。「夢」の字を書いたものに、夢子ちゃんと命名したこともあります。

2024年、仏教系の武蔵野大学の大学院に通っていて、講義で仏師の存在を知り、自分も作ってみたら面白いと思ったんです。彫刻は大変なので他にないか調べてみたら、焼き物のつちぼとけの教室が、家の近くの横浜そごうで行われていました。そこに1年ほど通い、主催の本寿院さんからお免状をいただきました。

今は場所が変わり、戸塚の日限地蔵尊で開催される教室に通っています。窯は本寿院さんと日限地蔵尊の両方にあって、それぞれ火力が違うので仕上がりが変わるのが面白いです。

制作は1体あたり1~2時間くらい。もくもくと作ります。教室のチャリティー販売のほか、作品を事業の利用者さんにお譲りすることもあって、けっこう喜ばれたりもするんですよ。

正方形の画像が4分割され、うち3つにさまざまなつちぼとけの画像、1つに土仏師の免状の画像が配置されている

経営理念として、「人生の変化にしなやかに対応できる暮らしの実現」「その人らしく安心して暮らし続けられる環境と関係性をともに創り続ける」を掲げています。

この理念を踏まえ、介護、両立支援、住まいという横断的な専門性を活かしながら、多職種連携をもっと進めていきたいです。そのためにも、介護・福祉の専門家だけでない人たちとつながりを持ちたいと考えています。

また、介護の両立の課題は従業員が言い出せず隠れていることがあるので、「とっかかり」として社内でのアンケートを実施してもらいたいと考えています。産業医さん・保健師さん・心理士(師)さんのような企業関係者や、産業保健総合支援センターなどの窓口とうまく連携したいと考えているところです。

いちばんは士業の方。企業さん、経営者さんとつながりがある方が多いですし、事業の周辺で成年後見が関係してくることも多いためです。

それから、労務担当者や人事労務部に所属している方、従業員を大事にしたいと考える経営者さんのような企業関係者さん。あとは居住支援の絡みで、工務店や不動産屋さんともつながれたら嬉しいです。

語り手 合同会社地域福祉マネジメント 代表社員 下村旭(しもむら・あきら)さん

元・ヤングケアラー。ゼネコン設計部を経て、(株)ニチイ学館で医療福祉系施設開発に携わる。2016年、合同会社地域福祉マネジメントを設立し、川崎市で居宅介護支援事業所「どんぐり」開設。ケアマネ業、介護両立支援、福祉系建築設計の3本柱で活動を続けている。

聞き手 今井恵理(いまいさん)


(行政書士)小蛇事務所代表・本サイトの運営者。事業者支援を専門とする行政書士、インタビュー記事中心のライター、個人向けライフコーチングを行っている。