士業の違いが分からない!いったん整理しよう

弁護士、司法書士、税理士、行政書士……

士業っていろいろいて、何を誰に頼んでいいかわからない、という方も多いと思います。

今回は、各士業の役割を整理してみましょう。

「士業」の範囲

士業とは「〜士(師)」のような名前がついている職業です。厳密にいえば、保育士、心理士、建築士なども士業にあたります。

一般に士業と言う際に想定されやすいのは、その中でもいわゆる8士業とか10士業と言われるもので、法令に関わる業務が多い士業です。

本記事では10士業を基準に置きつつ、10士業に含まれないものも入れて、身近な士業の全体像を掴みたいと思います。

お金に関わる士業

お金に関わる内容を扱っている士業には、主に税理士と公認会計士があります。

税理士

事業者である皆さんにとって、おそらく最も身近なのが「税理士さん」ではないでしょうか。まだ税理士に依頼したことがない方でも、税理士が何をする人なのか、うっすら知っていると思います。

税理士ができるのは、税金関係の相談を受け、書類を作成し、提出することです。他人の確定申告を代理できるのは税理士と弁護士だけ、ということで、決算・確定申告をお願いしている方が多いと思います。

事業主としての相続対策を相談したり、個人として相続税について聞いたりしたことがある方もいるでしょう。

決算に必要な日々の会計記帳や融資申請のサポートを受け付けている税理士もいますが、これらは税理士「だけ」ではない業務です。

また、他の士業の業務もそうですが、法令などに基づく税務の一般的な知識を伝えることは、税理士でなくても可能です。本ウェブサイトのような場で税金の法律について触れたり、顧客の相談に対して「〇〇税というものがあって、××だと税金がかかる可能性があります」と話すなどです。

ただし、行政書士が扱っても良いとされる自動車税など一部の税金を除き、個別の人の税金の具体的な計算をするのは、税理士(及び弁護士)だけの業務とされています。

公認会計士

公認会計士もお金の専門家です。公認会計士は監査など、計算された会計の正しさを確保する役割を担っています。

税理士とは専門性の共通項が多いのも事実です。しかしあえて業務で分けるなら、確定申告は税理士、監査は公認会計士となります。

もっとも、多くの公認会計士が、税理士資格も同時に保有しています(以前は、公認会計士資格があれば、登録だけで税理士にもなれました)。両方の資格を持っている人がどのような業務をメインにしているかは、ホームページや問い合わせで確認しましょう。

事業者の業務の一部を担う士業

士業の中には、「本来であれば事業者自身が自ら行う手続きの一部を代理する」性質が強いものがたくさんあります。

どの業務をどの士業にお願いすれば良いのか、困る前に確認しておきましょう。

司法書士

会社設立や不動産取得などでお世話になるのが司法書士です。

その主な業務は、登記関係。法務局への書類作成が中心です。一部の裁判所関連業務もできます。

会社設立では司法書士に丸ごと頼むことも多いと思いますが、厳密には司法書士に限られるのは登記部分だけで、定款は行政書士でも作成することができます。
相続で不動産登記が発生することが多いため、相続関係業務や家族信託を行う司法書士もいますが、ここにも司法書士以外でもできる内容がたくさんあります。

社会保険労務士(社労士)

雇用、賃金、社会保険などに関することを担うのが、社会保険労務士です。労働関係の争いの解決にも関わることがあります。就業規則の作成やキャリアアップ助成金などでお世話になったことがある方もいるでしょう。

社会保険の手続きなど、人を雇うことに関する申請・届出は、社会保険労務士または弁護士でなければ代理してはいけない業務です。

一方、社内の書類の作成や給与計算は、その専門性を買われて社会保険労務士が行うことが多いものの、特に資格がない人が行っても罰せられることはありません。
社労士業務に関する一般的な知識について話すことも、資格なしで行えます。

弁理士

特許や商標など、知的財産に関する手続を行ったり、関連する相談に応じたりするのが、弁理士です。

なお、「著作権」は弁理士だけに限定されず、行政書士も扱うことができます。

海事代理士

海事代理士は「海の行政書士」とも呼ばれ、船や船員に関する手続きの書類作成や代理を行います。

対応する業種がかなり偏り、知らない人は知らないかもしれない士業ですが、個人のレジャー船舶でも海事代理士の業務の対象になり得ます。

行政書士

行政書士は、難しい言い方をすれば、「官公署に提出する書類の作成・手続代理」「権利義務又は事実証明に関する書類の作成」ができます。

ひらたく言うと、「他の士業に限定されている内容以外は、大体全部」です。そのくらい業務が幅広いのが特徴です。

事業者相手ということで括れば、許認可や入札参加資格の申請代理、補助金の申請書類の作成・提出、従業員の在留資格関係の手続き、契約書の作成・チェックなどが、行政書士と弁護士だけができる業務です。

行政書士が行うことが多いものの、行政書士以外も可能な業務として、融資申請の支援、事務的な作業の支援などがあります。

また、行政書士は、個人の遺言書・相続関係や離婚などに関わることもあります。

不動産に関わる士業

不動産関係の士業として、3つ挙げます。

不動産は事業にも個人の人生にも関係するので、個人としてお世話になったことがある方もいるかもしれませんね。

宅地建物取引士(宅建士)

宅地建物取引士は、不動産取引の手続きの専門家です。

宅地建物取引業者(不動産業のうち一定のもの)として活動する事業者は、専任の宅地建物取引士を置き、重要事項説明などをさせなければいけません。

土地家屋調査士

土地家屋調査士は、不動産の状況を調査・測量し、登記に反映させる業務をしています。

司法書士は、不動産を「誰が持っているのか?」「誰に担保として差し出しているか?」などの、不動産に関わる人間の部分の登記を行います。

これに対し土地家屋調査士は、「その不動産はどこにあって、どこからどこまでか?」「どのくらいの大きさか?」などの、不動産そのものに関する登記を行います。

また、国交省管轄の測量士が広範囲の測量に関わる(その代わり土地家屋調査士のような調査や登記はできない)のに対し、土地家屋調査士は管轄が法務省であり、不動産登記のために必要な範囲の測量のみが業務範囲です。

不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産を鑑定し、評価を行います。

土地家屋調査士が測量などを通して「不動産そのものの状況」を調査するのに対して、不動産鑑定士は「その不動産の価値」、つまりお金について鑑定するのが特徴です。

その他の士業

上記のいずれとも言えない総合的な活動をする士業として、中小企業診断士と弁護士があります。

中小企業診断士

中小企業診断士には、「中小企業診断士でないとできない業務」がありません。

中小企業支援法という法律で「中小企業が経営状況について診断と助言を受けられる機会を確保するため、専門の人材を登録します(要約)」という決まりができたため、この登録人材として中小企業診断士が生まれました。

つまり、中小企業に対して経営状況の分析と助言を行うたくさんの士業のうち、特にその専門家として国に登録されているのが中小企業診断士、という位置づけです。

経営に関する知恵を得たい、改善案を聞いてみたい場合には、頼りになります。セミナーなどで活躍する中小企業診断士も多いので、興味があれば一度そういった場でお話を聞いてみるのも良いですね。

弁護士

法律・法務系資格の最高峰といえば、やはり弁護士です。

弁護士は、ほとんどの士業の業務を弁護士資格だけで行えます。また、弁護士資格があれば、それだけで他の士業に登録できる仕組みもあります。

その上で、特に弁護士だけができる業務として「紛争解決」があります。一部の例外はありますが、弁護士以外の士業は通常、「争いに発展してしまったらそこで終了」です。「争いが起きたら弁護士へ」です。

ただし、このように幅広く対応できる弁護士でも、土地家屋調査士、不動産鑑定士、宅地建物取引士などの不動産関係の資格の仕事はできないと理解されています。

また、幅が広いがゆえに、「弁護士でもできることになっているが、実際に行う弁護士はあまりいない業務」もあります。税理士、行政書士、社労士、司法書士など、他の士業のほうが活発に行っている業務も多いです。

顧問弁護士をつけて何でもかんでも丸投げできるのが理想ではあるかもしれませんが、なかなかそうはいきません。いろいろな士業をうまく使い分けるのが、安く効率的に、かつ適法に事業を行うための大切なポイントです。

今回の学び

こんなときはここ!をまとめました

業務対応する士業
確定申告・決算税理士・弁護士
登記司法書士・弁理士・弁護士
雇用、賃金、社会保険社会保険労務士・弁護士
特許、商標、意匠登録など知財全般弁理士・弁護士
著作権弁理士・行政書士・弁護士
船舶・船員海事代理士・弁護士
税務署税理士・弁護士
裁判所司法書士・弁護士
法務局司法書士・弁護士
会計監査公認会計士・弁護士
許認可その他、役所提出書類で上記以外行政書士・弁護士
補助金申請行政書士・弁護士
契約書行政書士・弁護士
離婚や遺産分割の協議書行政書士・司法書士・弁護士
会計記帳税理士を中心に誰でも
融資申請税理士・行政書士・中小企業診断士など
経営状況の分析・助言中小企業診断士・税理士・行政書士・弁護士など
争い・もめごと弁護士(一部、社労士・司法書士・行政書士等)
不動産の境界土地家屋調査士
不動産の価格を知りたい不動産鑑定士
不動産の売買・仲介等宅地建物取引士

おまけ:士業の人数分布

ここまで読んできて、「その士業には会ったことがないなあ」とか「やたらとよく見る気がするなあ」など、それぞれ印象があったと思います。

最後におまけとして、紹介した士業が全国にどのくらいいるかを載せておきます。印象と合っているでしょうか?

※各機関から最新情報を引っ張ってきたため、日付が揃っていません。参考程度に見てください。

士業名登録者数データの時期備考
宅地建物取引士1,211,7602024年3月31日
税理士82,4512026年2月末日
行政書士54,2772026年1月末日
弁護士46,2432025年3月31日
社会保険労務士46,2372024年3月31日
公認会計士37,7262026年2月28日準会員を除く
司法書士23,3872025年4月1日
土地家屋調査士15,6502023年4月1日
弁理士12,2442026年1月31日法人会員454を含む
不動産鑑定士8,7892025年1月1日
海事代理士約3,5002025年2月末日
中小企業診断士非公開大体2~3万と言われる

桁違いすぎる宅建士と非公開の中小企業診断士を除いてグラフにすると、以下の通りです。